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名前 越村 七子さん
留学先 ロシア・モスクワ 留学先学校名 Liden & Denz Moscow
- 留学の意気込み
- 学校についてのレポート
- 留学体験談
ロシア文化・芸術の魅力を伝えていきたいというのが私のライフワークです
なぜ留学に行きたいと思ったのか?
実は、2年前にも大学のプログラムで1ヶ月間の短期留学に出掛けたのですが、寮に滞在し日本人でまとまって生活してしまったので、楽しかったけれどそれほどロシア語が上達したわけではありませんでした。帰国してからはやる気が出て、ロシア語の勉強を続けてきましたが、独学で文法や読解の練習をしているだけでは自分から発話をするスキルが身につかず、もっとロシア語を話したいと思っていました。そんな時に、DEOWの短期留学プログラムの案内を目にしました。残念ながら、一般の留学斡旋会社の企画する多くの奨学金(給与型)付き留学プログラムには、必ずと言っていいほどロシアは対象国に含まれていません。しかし、世界語学学校協会と提携している今回のプログラムには、耳にしたことのあるロシア語の語学学校も対象となっていたので、すぐに応募を決めました。後にスポーツイベントの通訳ボランティアを務めさせていただけるという貴重な条件も、ぜひお受けしたいと思いました。
留学先で何を学んできたいか?
今回、私は人生初のホームステイを経験することになります。もともと内気で人見知りな性格なので、とても緊張していますが、使うであろうフレーズを事前にメモしておいて、ホストのご家族の皆さんと積極的に会話をしていきたいと思っています。また、今回授業を受けさせていただく学校には日本人の受講者は少ないようなので、他国の受講者の皆さんや先生、学校のスタッフの方々ともロシア語でたくさんお話したいです。文法や読解は自力でも勉強できるので、話す力はもちろん、聞く力や何気ない会話で使う表現も学んでいきたいと思っています。モスクワという街に関しては、以前にも滞在したことがあるので、方向感覚は備わっています。しかし、今回は有名な観光スポットだけではなく、観光地としてはマイナーだけれども歴史的に意義のある場所に赴けたらと思っています。特に、私が研究しているモスクワの劇場については、外観だけでもたくさん目にしておきたいです。
奨学生としての意気込み
どの団体でも、どの留学斡旋会社でもロシアの留学プログラム自体が企画されないこともあって、ロシアの留学体験レポートというのは実は少ないです。インターネットで検索してもそう多くは見つからず、見つけられたとしても少し情報が古いことが多いです。そもそも、日本の隣国であるにもかかわらず、日本人にとってロシアは未だにソ連時代の「謎多き国」の印象が強いようです。もっと多くの人に、特に自分と同じような若い世代の人々にロシア文化・芸術の魅力を伝えていきたいというのが私のライフワークです。今回の短期留学は、広報活動に協力することも条件となっているので、ロシアに対する「気難しさ」という敷居を少しでも低くできるよう、「陽気さ」や「面白さ」を持ったロシアの一面をお伝えできたらと思います。また、奨学生として選出していただいたからには、日々しっかりとロシア語の上達を意識して勉強に励むこと、そして、このような貴重な機会を全力で楽しんでいくことを心がけていきます。
留学先の学校について
私が通学したリデン&デンツという学校は、モスクワのベラルースカヤ駅から徒歩5~10分のところにあります。ベラルースカヤ駅というのは、地下鉄の駅としてだけではなく、日本で言えば新幹線の駅のような大ターミナルとしても機能しており、ベラルーシ?モスクワ間を走行する列車の始終着駅でもあります。そのため、周囲は飲食店を含めさまざまな商店でにぎわっているほか、朝でもたくさんの人がいました。学校自体は大きなビルの中の一角にあり、建物の敷地に入るには門を通らなければなりません。登校初日や週始めには、門番にパスポートの提示を求められました。2日目以降は、外国人ということもあって門番の方が顔を覚えてくれたので、すぐに入れてもらえました。
リデン&デンツは生徒と教員を含め、20?30人程度の小規模でアットホームな学校でした。先生方はいつも生徒のことを気遣ってくださる優しい方々で、ロシア語がわからなくても英語で話を聞いてくれます(初日に配布された注意事項の用紙はすべて英語で書かれていました)。生徒はヨーロッパ出身の方々が多く、日本人を含めアジア出身の方はほんの3?4人でした。前回、私はモスクワ大学付属の語学学校に通いましたが、そちらがアジア系の若い学生ばかりなのに対し、こちらは年齢層や職業も幅広かったので、社会人の方が通学しやすい学校だと感じました。休み時間になると、生徒さんたちは英語でコミュニケーションを取っていました。
初日は少し早めに登校し、事前にオンラインで受けたのとはまた別に、レベルチェックのテストを受けました。その結果でどのクラスに配属されるのかが決まります。私の通学中は4~5クラス程度に分かれていました。最初の週、私のクラスは自分を含めクラスに2~3人しかいませんでしたが、短期受講の方がほとんどのため週ごとにメンバーが変わり、最大6人の時もありました。だいたい5人くらいのクラスのことが多いようです。授業のスケジュールは10時から14時まで、50分授業×4コマ、うち10分休憩を3回挟みます。ウォーターサーバーやコーヒーが用意されていて自由に飲んでいいのですが、昼食を取る時間がないので、私は10分休憩の間に持参したお菓子をつまんでいました。私のクラスは毎日1限目に、月曜日なら週末どんなふうに過ごしたのか、火曜日以降はそれぞれが用意してきた自由なテーマのニュースを1人ずつスピーチし、新しい単語の確認や質疑応答をしていくということをしていました。ここでは作文・スピーチ力とリスニング力、会話力が鍛えられます。2限目以降は、学校オリジナルの教科書に沿って、文法や会話表現を学んでいきます。教科書は受講料に含まれており、初日からすぐ使えます。宿題は、その日の文法問題の復習を中心にほぼ毎日課されましたが、それほど多くはありません。ニュースの発表担当になった日だけ、話す文を用意していくのが若干大変でした。毎週金曜日には、その週の重要文法の筆記試験があり、一人一人の習得度を確認されます。出来が悪かった生徒だけ、そのまま居残りで先生が指導し直すという状況も見かけました。ただし、これらはあくまで私のクラスの内容なので、先生によって内容は異なると思います。私の担任の先生はとても熱心で、このようにかなりみっちり確認をしていくタイプだったので、たくさん勉強できてよかったと思っています。
滞在先について
私がお世話になったご家庭は、お母さんと20歳くらいの息子さんという構成でした。モスクワの中心部まで地下鉄で20~30分のところに位置する団地街の一角に住んでいました。これらの団地は、外観から判断する限りおそらく共産主義時代のソ連に建てられたものようですが、リノベーションがされているので家の中は古すぎるということはありません。一家庭に充てられた部屋はそれほど広くはなく、私のホストファミリーの区間は3部屋+ダイニングキッチン+バス・トイレという配置で、そのうち一番広い部屋を私に充ててくださりました。
ご家族について紹介します。ホストマザーは、幼稚園?小学校低学年の子供たちに正しい発音や言葉遣いなどを教える先生でした。学校に出勤しながら、自宅で個人レッスンも行っていたため、私も生徒さんである親子と挨拶を交わすことがよくありました。毎朝そして毎晩、ホストマザーはさまざまな食べ物を用意してくださりました。私がボルシチやモルス(ベリーのジュース)が好きだと言ったら、次の日に作ってくれたり、まったく知らない食品を紹介してくれたりもしました。他にも、日々の何気ない会話から私の学校の様子について、テレビを観ながら意見を言ったり、面白がって笑ったり…ホストマザーとはたくさんお話ししました。大学生の息子さんは、学校の授業のほかホッケーにも通ったり、しばしば友達と遊びに行ったりしていました。家にいる時は、日本の若者と同じく、パソコンやスマホでチャットや動画の視聴などをしていました。それでも、登校初日は学校まで連れて行ってくれたり、お母さんがいないときは食事を用意してくれたりととても優しい子でした。経済について学んでいるようで、日本の政治や経済についていろいろ質問してくれましたが、私の語彙力の無さとそれらに詳しくないせいできちんと答えられなかったので、大変申し訳なく思っています。また、ホストマザーのお父さん(すなわち、おじいさん)も週に2~3回の頻度でいらっしゃりました。彼は話すスピードもそれほど速くないので私には聴き取りやすく、日本についても少し知っているようでいろいろお話ししました。
留学先の都市について
ロシアの首都であるモスクワは、日本人が思っている以上に発展した都市です。地下鉄に乗れば、お年寄りの乗客でもスマートフォンを見ていますし、商業施設もたくさんあります。東京の至るところにコンビニやドラッグストアがあるのと同様に、モスクワの中心部にはスーパーと薬局(アプチェーカ)が至るところにあります。スーパーは、日本と同じくいくつかの会社がチェーン店として展開しており、低価格のプライベート・ブランドすら存在します。また、ここ数年は住宅街に大型ショッピングモールが次々と建てられており、そこにはユニクロを含めたファストファッションのお店も入っています。多くの人が抱くソ連時代の品薄なイメージとは裏腹に、大量生産・大量消費主義が発展しているのです。
それでも、クレムリンや赤の広場とワシリー大聖堂、ボリショイ劇場といった伝統的な建築物は変わらず威厳を保っており、何度訪れても圧倒されてしまいます。特に、地下鉄の駅のホームは装飾がとても美しく、フォトジェニックなスポットです。これらの伝統的な場所は、厳重なセキュリティチェックによって守られています。観光名所や美術館、地下鉄の改札など、重要な建て物に入る際には必ず警備員が監視していて、手荷物検査を受けなければならないときもあります。
地下鉄の駅や路線は難しくありませんが、乗り換えする際にホームが離れていて、とてつもなく長いエスカレーターに乗らなければならないことがよくあります。近年は、地下鉄のスマートフォンアプリが案内してくれるので便利になりましたが、それでも、(たとえ駅に施されたロシア語の表示が読めたとしても)思っていた通りの出口に出られないなどの困難さがあります。
そして、残念ながら、警備員や店員、通行人など誰かに道を聞こうとしても、英語が通じないことがほとんどです。とても美しく、見ごたえのある場所なので、私はたくさんの人にロシア旅行・モスクワ観光を勧めたいのですが、興味を持ちながらもロシア旅行に赴く人が少ないという現状は、このような言語の問題が最も大きいのではないかと思います。
School Evaluation
授業の内容 | ★★★★★ |
---|---|
教師の質 | ★★★★★ |
サポート体制 | ★★★★★ |
施設・設備 | ★★★★☆ |
アクティビティの充実度 | ★★★☆☆ |
立地環境 | ★★★★☆ |
他の生徒の雰囲気 | ★★★☆☆ |
国籍バランス | ★★★☆☆ |
School Photos
もっとたくさんの人にロシアを訪れてほしいと私は思っています
今回の留学の感想(総括)
今回の留学は、誰かが企画をして他の参加者とともに留学プログラムをこなすというものではなく、出発から帰国まで何もかも自力で行わなければならなかったので、1人でいる時間が非常に多かった印象が残りました。初めての留学や初めて訪れる場所であれば、頼れる人物やツールが少なく不安だったかもしれませんが、私はモスクワに滞在することが初めてではなかったので、それほど大変なことではありませんでした。モスクワでの留学プログラムをずっと一緒に過ごす仲間はいなかったものの、SNSを通じて他の国に赴いた奨学生の方々の投稿を見て、「皆も頑張っているんだな」と励みにしていました。
私の通った語学学校は14時で授業が終了するので、授業の後、毎日多くの時間を掛けて寄り道することが出来ました。1ヶ月という長い期間のなかでは、観光名所に立ち寄るだけではなく、現地の人が利用するスーパーや書店などにもたくさん赴きました。私は今後、モスクワへの長期留学を視野に入れているので、日常生活に必要な品々のことを意識しながら、どんな店がどこに位置するのか、スーパーにはどんなものが売っているのかを確認することが出来ました。ソ連時代(崩壊直後も含め)の品薄なイメージとは裏腹に、今はさまざまな商品に富んでおり、日本で生活するのと何ら変わりなく物が手に入るということが明白になりました。
留学期間中、辛かったことや困ったこと/今回の留学で学んだこと
留学中のレポートにも記した通り、今回私が通った語学学校はアジア人が少なく、ヨーロッパ系の受講生がほとんどでした。さまざまな国の人と知り合うことが出来るのは長所ではありますが、他の受講生は休み時間等は英語で話し掛けてきます。私はいつも「ロシア語を学びに来ているのだからロシア語を使いたいなあ」と思っていましたが、そこで英語で話し掛けていかないと受講生の間で浮いてしまいます。私は長らくロシア語の勉強に集中してきたため、英語を使い慣れていないこともあり、無理して他の受講生とコミュニケーションを取りにいくことはしませんでしたが、やはり孤独に感じてしまいました。それでも、「学校を出ればロシア語に溢れた環境なのだから」と思って耐えていました。
その分授業中はたくさん発言しようと心掛けていたのですが、何を言うかを考えている隙に、他の受講生に先にどんどん発言されてしまうということがたくさんありました。私は、何を話すにも、どうしても「正しい文法・単語を使って答えなくてはならない」という考えにとらわれ、突発的に発言することができず、つい簡単な文だけで答えてしまっていました。一方で他の受講生は、文法や単語の正確さは気にせず、自分の考えを率直に述べようと積極的に発言していたのでした。私の担任の先生もこの状況には気づいていたようで、私が発言するタイミングを失ってしまっても、必ず「あなたは?」と聞いてくださりました。最後の授業の後で「ヨーロッパ人はああやって考えなしにどんどんしゃべるからね」と慰めてはくれましたが、先生に気を遣わせてしまったなと未だに情けない思いが残っています。
以前から、海外で活躍する方々から「どんどん前に出ていかないとダメ」という話、すなわち、日本の外へ出ると、日本人の消極的な一面を痛感するということをしばしば耳にしていました。最近は、2020年の東京五輪を意識してなのか、テレビ番組などの各種メディアにおいて、日本の伝統工芸や生産技術、接客サービスなどの素晴らしさを通じて、「おしとやか」で「奥ゆかしい」性格や「真面目で細やか」というような日本人の長所をたたえようとする傾向が強くなっているように感じます。そのため、決して貪欲ではないけれど、何でも丁寧に行うことが出来るというような日本人の長所は、海外でも維持し、活かしていけるような気が勝手にしていました。
しかし、それはこうした日本人の長所を理解し、評価している人たちの前でしか通用しないということを実感しました。日本人の長所を理解し、評価している人たちの前では、そのような日本人らしい態度に違和感を与えることは少ないと思います。むしろ、日本人の特性を直に感じたいと期待されるかもしれません。しかし残念ながら、日本の特徴について、それどころか日本という国について、世界の誰もが知っているわけではありません。実際に私のホストマザーを含め、モスクワの一般的な人々は日本と中国、韓国の違いを的確に区別出来ていませんでした。これは日本にいるだけでは絶対にわからないことです。
こうした経験を通じて、日本の外へ出て異国の人たちと同じ土俵に立つとき、「私は日本人だから」という言い訳を真っ先にしないこと、日本人が思っている以上にまだまだ日本と中国・韓国との違いが浸透していないということを学ぶことが出来ました。日本の外へ出るときは、積極性や貪欲さ、質より量・スピードのような日本人に無い感覚を意識することが必要だと感じました。
今後、今回の留学をどのように活かしていきたいか
現地で購入することが出来る品々に関する情報や、現地の人々が日本についてどの程度の知識を有しているのか、どんな印象を抱いているのかなど、自身の長期留学にむけての準備が充実するようにさまざまな体験を活かしていきたいと思っています。これらは自分自身の今後に関わらず、日本ではまだまだ知られていないモスクワでの生活について、たくさんの人にお伝えできればと思っています。
日本とロシアは隣国であるにもかかわらず、日本人にとっては言葉が難しい、旅行もしにくい場所だと捉えられがちです。それでも、パリやローマなどヨーロッパの定番の旅行先と同じように、もっとたくさんの人にロシアを訪れてほしいと私は思っています。ロシアの魅力的な芸術や文化を紹介し、興味はあるけれど旅行するのが難しそうだと思っている人たちのサポートを務められたらいいなと思っています。
Memories
奨学生事務局より
ロシア・モスクワに留学された越村さん。今年はワールドカップが開催されましたが、留学先でロシアは馴染みがあまりないかと思います。当奨学金を知って、すぐに応募をして下さった越村さん。ロシアの首都・モスクワは伝統的な一面も持ちながら、近代的な表情も見せる都市。ワシリー大聖堂やクレムリン、赤の広場など、何度訪れても圧倒されてしまうとのこと。越村さんが「フォトジェニック」とコメントを下さった地下鉄の駅のホームは装飾が美しいそうです。
越村さんはロシアの語学学校・Liden&Denzで4週間勉強をされました。小規模校でアットホーム、ヨーロッパからの生徒が多かったそうです。熱心な先生のもと、たくさん学ぶことができたそうです。また、国によって学ぶ姿勢・スタイルが違うことについてコメントを下さりました。授業中、ヨーロッパから来た生徒たちは文法などは気にせずに、どんどん発言をされたそう。日本の外へ出て、他の国の人たちと同じ土俵に立つときは、積極性や貪欲さなど、日本人に無い感覚を意識していくことが必要だと仰って下さりました。
留学を終えて、もっとたくさんの人にロシアを訪れてほしいとの越村さん。ロシアに渡航する人が今後増えていくよう、サポートをしてきたいと仰って下さいました。日本と隣国であるロシアの懸け橋になるよう、頑張って下さいね。
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